私はリオの音楽を聴くために生まれた。子供の頃は伝統的なサンバ、思春期はボサノヴァ。私の家族も愛していたジャズやクラシックと並んで、リオのスタイルは私の絶対的なお気に入りでした。
私が10歳の時、テレビでアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ヴィニシウス・ヂ・モライス作詞による映画『黒いオルフェ』のメインテーマである「フェリシダーヂ」を歌うジョアン・ジルベルトのパフォーマンスを見ました。その時、私は天啓を受けたのです。抑えきれない感情を胸に、自分の部屋へ駆け込み祈りました。いつの日か私が今テレビで見たような音楽や歌詞を書くことができますように、そして歌って演奏ができますようにと。私は自分の人生の指針を見つけたのです。
そして数年後、私は幼年期の英雄達—ジョビン、ヴィニシウス、そしてジョアンと出会い、友人になるのです。ジョビンとヴィニシウスはどちらもとても気さくで、すぐに仲良くなりました。しかしジョアンは違って、一人を好む一匹オオカミでした。それでもメキシコやニューヨークで彼と会ったり、話したり、一緒に過ごす機会が何度もあったことを今でもうれしく思っています。
私はかつて、「ボサノヴァはブラジルにあるべき」と言っていました。ブラジル以上に繊細さと美しさを兼ね合わせた、約束された地はないと。ですが今、その美しい国はこれまで以上に理想からかけ離れているように見えます。それゆえ、なおさら私はボサノヴァを歌わなければならないと思うのです。ジョアン・ジルベルトをはじめ、ジョビンまたヴィニシウス達の音楽は不滅です。私たちは今、彼らが残した素晴らしい遺産を尊重する必要があります。
今回の日本公演では、私なりにアレンジをした彼らの素晴らしい音楽をお届けしようと思います。特別ゲストとして、今ブラジルで最も素晴らしい声を持つ一人、作曲家、ギター・プレイヤーでもあり、“Boca Livre”のリードシンガーとしても知られるゼ・ヘナートをお迎えします。彼と一緒に美しいボサノヴァの楽曲を探求し、再び時が経っても色褪せない名曲達を生き返らせます。また、現在ゼ・ヘナートと作っている曲も少し披露いたします。きっとボサノヴァの偉人達のスタイルを深く感じ取ってもらえるでしょう。
ボサノヴァは生きている!
ジョイス・モレーノ
Joyce Moreno
『ジョイス・シングス・トム・ジョビン』
(Philips)
Joyce With WDR Bigband
『セレブレイティング ジョビン』
(オーマガトキ)
Joyce Moreno & Alfredo Del Penho
『Argumento - Cancoes de Sidney Miller Ao Vivo No Ims』
(Kuarup Musica)
Joyce Moreno
『50』
(Biscoito Fino / Rambling RECORDS)
Zé Renato
『Bebedouro』
(Independente)
ZR Trio
『O vento na madrugada soprou』
(Tratore)